JRAの馬インフルエンザ対応を斬る!
馬インフルエンザの流行により開催中止に追い込まれていた中央競馬が、今週は開催することに決まりました。報道で知る限りにおいて、新たな感染馬がどんどん見つかっている状況で、とても事態が終息、沈静化したとは思えません。今週開催できるのならば、先週も開催しようとすればできたはずです。逆に、インフルエンザの流行で先週開催しないと決めたのだから、事態がおさまっていない以上は、今週も開催すべきではないということになります。
JRAの立場で考えてみれば、突然のインフルエンザの流行に驚き、事態がどれほどのものか確認するためにとりあえず2日間の開催中止を決定した、幸いそれほど深刻な事態ではないと確認されたため来週からは開催します、と言うならば、話は分かる。それならばそうときちんと説明すべきだ。JRAのホームページを見たが、大体同趣旨のことが書いてあった。しかし、一般の報道を見る限りでは、どうもJRAが闇雲に開催決定を決断したという印象がぬぐい去れない。もし、JRAホームページにあるように、現在ではワクチンの接種により馬インフルエンザはそれほど深刻な問題ではなくなっている、ということならば、先週あれだけ大騒ぎして開催中止を決めたことの説明がつかなくなる。今回の馬インフルエンザの流行とJRAの対応をめぐる報道を時系列にまとめてみた。記事はYahoo!ニュースから拾った。記事は筆者が勝手に要約した。要約に関する文責は筆者にあります。
16日13時5分配信(産経新聞)。馬インフルエンザについての第一報。トレセンで馬インフルエンザの疑いのある競走馬が確認された。JRAは施設間での競走馬の移動を禁止。18、19日に開催予定の小倉、新潟、札幌の各競馬場のレースについて、16日中に開催か中止かの判断を下すとした。
16日19時54分配信(毎日新聞)。発症馬がトレセンにいる計2888頭のうち20頭と少ないため、JRAは18日、19日の競馬開催について、予定通りに実施する方針。
17日15時14分配信(産経新聞)。出走予定の163頭中29頭が馬インフルエンザに感染。感染拡大防止の観点から、18日、19日の開催が一転、中止に。
同日22時2分配信(毎日新聞)。メイショウサムソンが馬インフルエンザに感染していることが分かった。
同日14時31分配信(時事通信)。馬インフルエンザの余波で大井競馬が開催中止に(検査結果は陰性)。
18日19時31分配信(時事通信)。競走馬3頭に陽性反応。金沢競馬も開催中止。
同日19時35分配信(netkeiba.com)。メイショウサムソン陣営が凱旋門賞出走を断念。
同日20時33分配信(毎日新聞)。小倉競馬場の厩舎にいる177頭中1頭が馬インフルエンザに感染。
19日1時54分配信(毎日新聞)。旭川競馬で1頭に陽性反応。開催中止。
同日9時19分配信(産経新聞)。専門家が馬インフルエンザのワクチンが効きにくくなっている可能性を指摘。
20日13時6分(毎日新聞)。名古屋競馬で1頭に陽性反応。開催中止。
同日19時1分配信(時事通信)。22頭が陽性反応。19日までに陽性反応を示した競走馬は計151頭。
21日20時35分配信(時事通信)。6頭に陽性反応。累計157頭。JRAは出走希望馬2000頭の検査を踏まえ、22日に今週末開催できるかを判断と発表。
同日22時21分配信(読売新聞)。金沢競馬に所属する馬の約2割強にあたる114頭が新たに感染していたと発表。
同日18時56分配信(毎日新聞)。JRAは25、26日の中央競馬開催を決定。陽性反応を示す比率が半減したことから、「事態が沈静化に向かっている」との判断。農水省は、当面の間は出走予定馬の全頭検査と陽性反応が出た馬をレースから除外するよう通知。19日に予定されていた札幌記念は9月2日の開催が決まる。
22日21時9分配信(毎日新聞)。岩手・水沢競馬場で3頭が感染。レースは開
催。
23日10時22分配信(毎日新聞)。園田競馬場で1頭が陽性。
同日21時4分配信(毎日新聞)。大井競馬場で4頭が陽性。
こうして改めてニュースを時系列にまとめてみると、JRAが当初、事態を軽く見ており、先週の競馬開催を行う方針であったのが、その後の事態悪化により、一転、開催中止を決めたということ、地方競馬などでウィルスの陽性反応が出る馬が続出して開催中止となる競馬場が相次いだことがよく分かる。こうして馬インフルエンザに関わるニュースを並べてみて、これで馬インフルエンザは終息しつつあるんだなあと感じる人は少ないのではないか。
専門家も数多くいるはずのJRAが開催を決定したということは、事態が沈静化しつつあるというのも、根拠のないデタラメというわけではないのだろうが、こうしたニュースの流れの中での開催決定を、奇異なものとして感じる競馬ファンや競馬にそもそも関心のない一般人は少なくないはずだ。馬インフルエンザ流行の「事態が沈静化に向かっている」のはそのとおりかもしれないが、事態が沈静化してまったわけでも、ましてや終息したわけでもないのは誰の目にも明らかである。当初の大騒ぎ振りを考えると、事態が完全に、あるいは、ほとんど終息してしまわない限り、JRAは競馬開催を行わないし、行うべきでもないと考える人が多数であっても不思議はない。
私自身はこうした状況の中での開催自体には、一定の理解をしているつもりである。JRAのホームページにあるように、世界の共通ルールではウイルスの陽性反応だけでレースへの出走の可否が決まることはない、ということや、馬から人に感染することはないということ、馬に感染した場合でも重篤(重病化)な症状を引き起こすものではないということは、こうした状況においても競馬を開催するということに、一定の説得力をもって訴えかえるものがある。しかし、JRAの開催決定に至る過程や対応にはおおいに疑問がある。
馬インフルエンザの発生を公表するも、予定通り開催の方針としておきながら、感染馬の拡大を見て、直前になって開催中止を決定。各地で新たな感染馬が見つかり、今度はいつ開催できるか分からないという雰囲気が漂うなかでの、今週の開催決定。世界共通のルールではウイルスの陽性だけでレースへの出走の可否が決まることはないと言いながら、陽性の馬をレースから締め出すという矛盾。これらの対応は、見るものに不信感を与えた。
このことについて、どの程度JRAに責任があるかは必ずしも明確ではない。多分に世間の誤解もあるかもしれない。しかし、決定したからには、競馬ファンに限らず競馬に関心のない一般の人々にも納得のいくように説明しなければならないし、納得させるだけの説明ができないのならば、そもそも、そのような決定はすべきではない。世間を納得させられなければ、利益至上主義のJRA、防疫や馬の健康よりも目先の開催を優先という批判は甘んじて受けなければならないだろう。批判の矛先がJRAだけに向かうとは限らない。病気の馬を酷使してまでレースを使う競馬界、それを見て喜んでいる競馬ファンへの冷たい目として返ってくることもないとはいえない。思いがけず、今週からまた競馬ができると言って競馬ファンは喜んでいればいいという話ではないのだ。今週の競馬開催というJRAの決定に文句がある奴は、馬券を買わなければいいだけの話だという意見があるが、私はそのような考えはとらない。この問題は、単に公正競馬の確保といった点にとどまらない問題だからである。
このような倫理上の問題とは別に、ごく単純で実務的な問題もある。とりあえず今週末の競馬開催は決定されたわけだが、これにともなって、競走馬の施設間の移動も再び解禁されているのか。競馬開催が決定された以上、トレセンから競馬場への移動ができるのは当然として、トレセンから牧場、牧場からトレセンへの移動も解禁されるのか。ニュースサイトを見てもJRAのHPの説明を見てもそのあたりが今ひとつはっきりしない。レースを行えば、当然、消耗して休養が必要になる馬や、レースに向けて牧場からトレセンに帰ってこなければならない馬が出てくる。そうした馬をトレセンや牧場に縛り付けたままにしておくことなどできはしないし、移動を解禁するならするで、防疫はどうするのか、競走馬の移動によって、沈静化に向かっていた馬インフルエンザが再び息を吹き返さないとも限らない。いずれにせよJRAはきちんと説明をしなければならない。
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コメント
荒れそうですよねぇ
投稿: 超熟女 | 2007年8月24日 (金) 11時40分
馬券的には、荒れるかもしれませんが、荒れるとすれば、馬インフルエンザそのものが原因というよりは、今回の一連の騒動で、思ったような調整ができなかったという間接的な要因によるものでしょう。JRAが陽性反応が出た馬は出走させない方針を出している以上、一応、信頼して、馬インフルエンザが発症した馬が出走してくることはないと考えています。全体的には馬券的な荒れる、荒れないに関して、今回の馬インフル騒動の影響は軽微であると考えます。
ただ、あまり荒れるようだと、その要因に係わりなく、JRAが批判を浴びるということはあるかもしれません。
投稿: ホストブロガーK | 2007年8月24日 (金) 17時46分